こんにちは。はたらくわ編集部です。
出産して育休から復帰し、時短勤務でなんとか家庭と仕事を両立させようと頑張っている毎日。でも、責任ある仕事を任されなかったり、補助的な業務ばかりが続いたりする「マミートラック」につらいと感じていませんか。
「もっと働きたい」「キャリアを諦めたくない」と思う一方で、早く帰る自分がそれを望むのはわがままなのではないか、周囲にしわ寄せがいって迷惑だと思われているのではないか、そんな不安に押しつぶされそうになることもあるかもしれません。
独身の同僚からずるいと思われているような気がしたり、権利ばかり主張してうざいと陰口を言われているのではないかと疑心暗鬼になったりして、もう仕事を辞めたいとまで追い詰められてしまう前に、一度立ち止まってみてください。この現状から抜け出し方を一緒に考えていきましょう。
- 自分がわがままなのではなく構造的な問題であることを客観的に理解できる
- 周囲からのネガティブな評価に対する恐怖心の正体と対処法がわかる
- 上司との交渉術やマインドセットの変化による具体的な脱出方法を学べる
- 転職を含めたキャリアの選択肢を知り、前向きな行動指針が得られる
マミートラックでわがままだと自分を責めてしまう理由

「時短勤務をさせてもらっているだけで感謝すべきなのに、やりがいまで求めるなんて贅沢だ」。そんなふうに自分自身を責めてしまっていませんか。ここでは、なぜ私たちが「わがまま」という言葉にこれほどまでに囚われ、苦しんでしまうのか、その心のメカニズムと背景にある職場環境について深掘りしていきます。
マミートラックがつらいと感じるボアアウト現象
毎日会社に行き、淡々と業務をこなし、定時になったら急いで保育園へ向かう。一見すると、ワークライフバランスが取れた恵まれた環境に見えるかもしれません。しかし、あなたの心の中には「退屈さ」や「虚無感」が広がってはいないでしょうか。
忙殺されて疲弊するバーンアウト(燃え尽き症候群)に対し、仕事の負荷や刺激が少なすぎて精神的に疲弊することを「ボアアウト」と呼びます。「私じゃなくてもできる仕事」ばかりを繰り返す日々は、自分の能力が否定されているような感覚に陥りやすく、想像以上につらいものです。
ボアアウトは「楽でいい」状態ではなく、「自分の価値を感じられない」という強いストレス状態です。
このつらさを「仕事が楽なんだからいいじゃない」と片付けてしまうのは危険です。スキルが活かせない焦りは、決してあなたのわがままなどではありません。
期待されない日々に疲れたと感じる瞬間
かつてはプロジェクトの最前線でバリバリ働いていた人ほど、復帰後のギャップに苦しみます。会議に呼ばれなくなる、重要なメールのCCから外れる、新しいプロジェクトの話が自分の頭越しに進んでいく。そんな「期待されていない」空気を感じ取ったとき、どっと疲れが押し寄せてきますよね。
会社側は「育児中で大変だろうから」という善意の配慮(パターナリズム)で業務を減らしているケースが多いのですが、それが私たちにとっては「戦力外通告」のように受け取れてしまうのです。
「もう少し難しい仕事もできます」と伝えたくても、「急に休むかもしれないのに無責任だ」と思われるのが怖くて言い出せない。この「期待に応えたいけれど、物理的な制約がある」というジレンマこそが、疲労感の正体です。
独身にしわ寄せがいきずるいと言われる恐怖
時短勤務で先に帰るとき、残業している同僚の背中に「申し訳ない」と心の中で手を合わせるような気持ちになったことはありませんか。特に、かつての自分と同じように働いている独身女性や男性社員に対して、「あの人はずるい」と思われているのではないかと過剰に反応してしまいがちです。
実際には誰も口に出していなくても、あなた自身の罪悪感が「ずるいと言われている」という幻聴を作り出している可能性があります。
もちろん、業務の偏りによって周囲に負担がかかっている事実はあるかもしれません。しかし、それは個人の問題ではなく、「誰かが休むと回らなくなる組織体制」の問題です。それを個人の「ずるさ」に帰結させて自分を責める必要はありません。
権利主張がうざいと思われることへの不安
「子供が熱を出したので早退します」「行事があるので休みます」。これらは働く親として当然の権利であり、必要な対応です。しかし、これを繰り返すうちに「権利ばかり主張してうざい」と思われていないか、どんどん不安になっていきますよね。
特に、マミートラックからの脱出を望んで「もっと責任ある仕事をしたい」と声を上げることは、周囲から見れば「これ以上周りに迷惑をかける気か」と捉えられかねないという恐怖があります。
「配慮はしてほしいけれど、仕事の機会も平等にほしい」。この主張は、一歩間違えれば「いいとこ取り」に見えてしまうリスクがあります。だからこそ、私たちは口をつぐみ、「今のままで我慢するのが大人だ」と自分に言い聞かせてしまうのです。
仕事を辞めたいと追い詰められる前に考えること
「こんなに肩身の狭い思いをするくらいなら、いっそ辞めてしまいたい」。マミートラックに悩み、自己肯定感が下がると、極端な選択肢に救いを求めたくなります。しかし、衝動的な退職はキャリアにとって大きなリスクになりかねません。
辞めたいと思ったときは、まず冷静に「何が一番つらいのか」を分解してみましょう。
- 仕事内容がつまらないこと?
- 周囲の視線が痛いこと?
- 将来のキャリアが見えないこと?
もし「将来への不安」が理由なら、今の会社で働き方を微調整することで解決できるかもしれません。完全に辞めてしまう前に、まずは「わがまま」だと思っている自分の要望を、正当な「キャリアプラン」として捉え直してみることが大切です。
マミートラックはわがままではない!現状打破の対処法

ここからは、マインドセットを変え、具体的な行動に移すためのフェーズです。あなたの「働きたい」という思いは、会社にとっても本来プラスになるはずのエネルギーです。それを正しく伝え、現状を変えていくための3つのステップをご紹介します。
会社への交渉によるマミートラックの抜け出し方
まず大切なのは、「察してもらうこと」を諦めることです。上司は悪気なく「今の業務量が彼女にとって最適解だ」と思い込んでいる可能性が高いです。この認識のズレを解消するには、言葉にして伝えるしかありません。
| NGな伝え方 | OKな伝え方 |
|---|---|
| 「もっと仕事をください」 (漠然としすぎ) |
「現在の業務は定時より〇時間早く終わります。追加で〇〇の業務を担当可能です」 |
| 「マミートラックは嫌です」 (感情的) |
「長期的に管理職を目指したいので、今は〇〇のスキルがつく案件に関わりたいです」 |
交渉のポイントは、「会社のメリット」とセットで伝えること。「私のわがまま」ではなく、「会社のリソースを有効活用する提案」として話を持っていきましょう。
配慮ではなく機会を求めて上司と対話する
上司との面談では、「配慮」と「機会」を明確に区別して伝えることが重要です。
配慮:残業免除、急な休みへの対応など、物理的な制約に対するサポート。
機会:昇進につながるプロジェクト、スキルアップできる難易度の高い業務。
「配慮は必要ですが、機会まで奪わないでほしい」と伝えましょう。具体的には、「時間の制約はありますが、成果の質ではフルタイムの社員に負けないよう努力します。そのための評価指標を、時間ではなく成果で設定してほしい」と提案するのが効果的です。
「制約がある=戦力外」ではなく、「制約がある中でどう成果を最大化するか」という視点を上司と共有できれば、マミートラックから抜け出す糸口が見えてきます。
環境を変えるなら転職も視野に入れて動く
どれだけ交渉しても、企業風土として「長時間労働=美徳」という価値観が根強い場合や、マミートラックが固定化されている場合は、社内での解決が難しいこともあります。そのときは、外の世界に目を向けてみましょう。
実は、「今の会社ではわがまま」とされる働き方が、他社では「当たり前」であることも珍しくありません。フレックス制度、フルリモート、成果主義が浸透している企業では、ママであるかどうかに関わらず、フラットに評価される環境が整っています。
転職活動を実際にしなくても、転職サイトを眺めたり、エージェントに話を聞いたりするだけで、「自分には市場価値がある」と気づけ、自己肯定感が回復することもあります。
自分のキャリアを取り戻すための考え方
「会社が用意したキャリア」ではなく、「自分の人生のためのキャリア」という視点を持ちましょう。会社への忠誠心だけで働いていると、マミートラックに乗せられたときに「裏切られた」と感じてしまいます。
しかし、自分の人生の主導権を自分で握っていれば、「今は育児優先の時期だから、このトラックを利用してスキル磨き(リスキリング)の時間に充てよう」と、戦略的に今の環境を利用することもできます。
30代、40代はキャリアの分岐点ですが、まだ後半戦は始まったばかり。焦る必要はありませんが、「思考停止して会社に委ねる」ことだけは避けるべきです。
マミートラックでわがままと悩む必要はない
最後に、これだけは伝えたいです。あなたが「働きたい」「成長したい」と願うことは、決してわがままではありません。それは、あなたが仕事に対して真摯に向き合ってきた証拠であり、プロフェッショナルとしての誇りです。
周囲への感謝や配慮は忘れずに、でも過度な罪悪感を持つ必要はありません。「わがままかな?」と迷ったら、「これは会社と私、双方にとって良い未来につながる提案だ」と胸を張ってください。あなたのキャリアは、誰かのものではなく、あなた自身のものです。少しずつでも、納得できる働き方へ舵を切っていきましょう。

