こんにちは。はたらくわ編集部です。
退職を決意したものの、「直属の上司にだけはどうしても言いたくない…」と悩んでいませんか?
上司が怖い、パワハラを受けている、あるいは、お世話になったからこそ気まずいなど、理由は人それぞれだと思います。退職を誰に言うか、その順番を間違えてトラブルになったらどうしよう、と不安になりますよね。
上司を飛ばすなんて、マナー違反かもしれないと躊躇してしまう気持ちもよく分かります。人事に直接言ってもいいのか、それともメールで伝えるべきか、考えれば考えるほど、一歩が踏み出せなくなってしまうかもしれません。この記事では、そんなあなたの悩みに寄り添い、直属の上司を介さずに、円満に退職するための具体的な方法と手順を解説していきます。
- 上司に言いたくない理由別の対処法
- 退職を伝える相手と正しい順番
- 上司を飛ばす場合の注意点とリスク
- どうしても無理な時の最終手段
「退職を直属の上司に言いたくない」その理由と原則

まずは、なぜ直属の上司に退職を伝えるのが基本とされているのか、その原則から見ていきましょう。社会的なルールを知ることで、あなたの状況が「例外」に当てはまるのかを冷静に判断する材料になりますよ。
パワハラが原因で退職を言い出せない
「退職を伝えたら、何を言われるか分からない…」高圧的な上司や、感情的な上司のもとで働いていると、そう考えてしまうのは当然のことだと思います。
実際に、日常的なパワハラやセクハラが原因で、上司と二人きりで話すこと自体に恐怖を感じている人は少なくありません。
「お前が辞めたら部署がどうなると思ってるんだ!」といった過度な引き止めや、退職の意思を伝えても「気のせいだ」「もう少し頑張れ」と無視されたり、話を握り潰されたりする懸念がある場合、直属の上司に伝えるのは精神的にとても大きな負担ですよね。
こうした正当な理由がある場合、無理して原則に縛られる必要は全くありません。
退職を伝える正しい順番と基本マナー
まず、会社のルールとして「退職の意思は、最初に直属の上司へ伝える」のが一般的とされています。なぜなら、直属の上司はあなたの業務を管理し、チームの人員を把握する一次責任者だからです。
部下であるあなたから最初に報告を受けることで、後任の選定や業務の引き継ぎ計画をスムーズに進めることができます。
就業規則でそのように定められている会社も多いですね。
そのため、「お世話になったから言いづらい」「単に気まずい」といった理由の場合は、勇気を出して直属の上司に伝えることが、結果的に一番スムーズな円満退職につながる可能性が高い、というのが基本的な考え方になります。
原則として直属の上司に伝える理由
- 指揮命令系統の維持:チームの責任者に最初に状況を把握してもらうため
- 就業規則:社内ルールで定められている場合が多いため
- スムーズな引継ぎ:業務を最も理解している上司と調整するため
上司を飛ばすのはマナー違反になる?
では、直属の上司を飛ばして、さらに上の役職者や人事部に伝えるのはマナー違反なのでしょうか?
結論から言うと、正当な理由があれば、決してマナー違反にはなりません。
たとえば、前述したようなハラスメントが横行しているなど、直属の上司に伝えることで心身に危険が及ぶ可能性がある場合は、あなた自身の安全を最優先に考えるべきです。
もちろん、事情を知らない他の社員から見れば、「順番を間違えている」と一時的に思われる可能性はゼロではありません。しかし、それはあくまで表面的な話。あなたの状況を鑑みれば、それは「適切な手続き」と言えます。大切なのは、なぜその手順を踏む必要があったのかを、次の相談相手に誠実に説明することですね。
怖い引き止めにあわないための伝え方
退職を伝える際に、強い引き止めにあうのが怖い、という方も多いと思います。引き止めにあいにくくするためには、伝え方にいくつかコツがあります。
それは、「相談」ではなく「報告」の形で伝えることです。
「退職しようか迷っていて…」というニュアンスで伝えると、「何が不満なんだ?改善するから」と交渉の余地を与えてしまいます。
そうではなく、「退職を決意いたしました。退職日は〇月〇日を希望しております」というように、すでに確定した事項として報告するのがポイントです。
強い意志を示すことで、相手も「引き止めても無駄かもしれない」と感じやすくなります。退職理由を聞かれた際は、「一身上の都合」で通すのが基本ですが、もし詳しく聞かれた場合は「家庭の事情」や「新たな分野への挑戦」など、会社への不満ではない個人的な理由を簡潔に伝えると良いでしょう。
退職を上司以外に伝えるのは合法?
「上司を飛ばして退職を伝えたら、法的に問題になるのでは?」と心配になるかもしれませんが、安心してください。労働者が退職することは法律で認められた権利です。
知っておくと安心「民法第627条」
期間の定めのない雇用契約(多くの正社員がこれに該当します)の場合、労働者はいつでも退職の申し入れができます。そして、申し入れから2週間が経過すれば、会社の承諾がなくても雇用契約は終了する、と定められています。
つまり、会社や上司には「あなたを辞めさせない」という権利はありません。
就業規則に「退職は1ヶ月前までに申し出ること」などと書かれていても、それはあくまで会社のルール。法律上は2週間前に意思表示をすれば退職は成立します。
この法律は、万が一のときにあなたを守ってくれる「お守り」のようなもの。知っておくだけで、少し心が軽くなるのではないでしょうか。
「退職を直属の上司に言いたくない」を円満に叶える方法

ここからは、実際に直属の上司を介さずに退職手続きを進めるための、具体的なアクションプランを見ていきましょう。誰に、どうやって伝えればいいのか、具体的な例文も交えて解説しますね。
上司を飛ばしても良い正当な理由とは
まず、あなたが「上司を飛ばしても仕方ない」と判断できる正当な理由を整理しておきましょう。これらに当てはまる場合は、ためらわずに次のステップへ進んでください。
直属の上司を介さなくて良いケース
- ハラスメント:上司からパワハラ、セクハラ、マタハラなどを受けている。
- 精神的な不調:上司が原因でうつ病や適応障害などを発症し、医師の診断書がある。
- 握り潰しの懸念:過去に相談したが取り合ってもらえなかった、退職願を受理されなかったことがある。
- 長期不在:上司が休職や長期出張などで、連絡が取れる状態にない。
これらの理由は、あなた個人の「気まずい」といった感情とは異なり、客観的に見てもやむを得ない事情と判断されやすいものです。
人事部へ相談する際のメール例文
ハラスメントが理由の場合などは、人事部(労務担当者)に直接連絡するのが最も適切なケースが多いです。人事は労働問題のプロであり、今後の手続きをスムーズに進めてくれる可能性が高いでしょう。まずはメールで面談のアポイントを取るのがおすすめです。証拠が残るというメリットもあります。
【例文】人事部宛の相談メール
件名:ご相談(所属部署名 あなたの氏名)
人事部 〇〇様
お疲れ様です。
〇〇部の(あなたの氏名)です。
突然のご連絡失礼いたします。
この度、一身上の都合により退職を決意いたしました。
本来であれば、直属の上司である〇〇課長に申し出るべきところ、
大変申し上げにくいのですが、直接お伝えすることが困難な事情があり、
人事部の皆様にご連絡させていただきました。
つきましては、今後の手続きについてご相談させていただきたく、
別途お時間をいただくことは可能でしょうか。
お忙しいところ大変恐縮ですが、ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
(所属部署名)
(あなたの氏名)
【メールのポイント】
- 「相談」ではなく「退職を決意した」という報告の形にする。
- 上司を飛ばすことへの謝罪の一文(「本来であれば〜」)を入れる。
- 詳細な理由は書かず、「困難な事情」と留めて面談で直接話す。
上司のさらに上へ伝える時の注意点
人事部がない、あるいは先に部署内で完結させたい場合は、直属の上司のさらに上の上司(部長など)に伝えるのが次善策です。指揮命令系統を大きく乱すことなく、話を進めやすい方法と言えます。
この場合も、まずはメールでアポイントを取りましょう。
切り出し方としては、「〇〇課長(直属の上司)には直接お話ししにくい事情がございまして、大変恐縮ですが、△△部長に先にご相談させていただきたく、お時間をいただけないでしょうか」といった形で、丁寧にお願いするのが良いでしょう。
この方法のデメリットとしては、部長から直属の上司へ事情を確認する際に、話がこじれてしまう可能性がゼロではないことです。しかし、ハラスメントなどの正当な理由があれば、部長も適切に対応してくれるはずです。
退職届を上司以外へ提出する方法
退職届は、会社の代表者(代表取締役社長)宛に作成する書類です。そのため、直属の上司の承認印がなくても、人事部や部長が受理すれば法的に何の問題もありません。
退職理由は「一身上の都合により」で大丈夫です。人事部や部長との面談の際に直接手渡しするか、後日、指示された部署へ郵送しましょう。
万が一、会社全体が非協力的で退職届を受け取ってもらえない、といった最悪のケースでは、本社所在地宛に「内容証明郵便」で送付するという最終手段もあります。これにより、「退職の意思表示をした」という公的な証明が残ります。
最終手段としての退職代行サービス
「もう誰とも話したくない」「精神的に限界で、会社と連絡を取ること自体が辛い」という場合は、退職代行サービスの利用も選択肢の一つです。
あなたの代わりに、退職の意思を会社に伝えてくれるサービスで、出社せずに退職手続きを進められる場合がほとんどです。
退職代行サービスの注意点
費用がかかる(相場は2〜5万円程度)こと、そして円満退職とは言い難い形になる可能性があることは理解しておく必要があります。
また、会社との交渉(有給消化や未払い賃金の請求など)を行えるのは、弁護士か労働組合が運営するサービスに限られます。依頼する際は、運営元をしっかり確認することが非常に重要です。
心身ともに追い詰められている状況であれば、自分を守るための有効な手段だと思います。ただし、あくまで最終手段として検討するのが良いかもしれませんね。
※費用やサービス内容はあくまで一般的な目安です。利用を検討する際は、複数のサービスの公式サイトを確認し、ご自身の状況に合ったものを慎重に選んでください。
退職を直属の上司に言いたくない悩みは解決できる
ここまで見てきたように、「退職を直属の上司に言いたくない」という悩みには、たくさんの解決策があります。
大切なのは、あなた一人で抱え込まないこと。そして、あなたの状況に合わせて、原則と例外を使い分けることです。
パワハラなど正当な理由があるのなら、自分を責める必要は全くありません。人事部やさらに上の上司など、社内にはあなたの味方になってくれる人がいるはずです。
この記事で紹介した方法を参考に、あなたにとってベストな一歩を踏み出してくださいね。応援しています。

